■ エドゥアール・マルセル・サンド ■

 

 東京都庭園美術館の庭に、ひっそりと座る豹のブロンズ像がある。これは1995年に「動物たちのシンフォニー〜エドゥアール・サンド彫刻展」の開催を記念して作られたレプリカで、オリジナルはスイスのサンド美術館にある。そしてこのサンドの彫刻こそ、私がカルティエ以外で認めている優れた猫科の彫刻なのだ。動物好きなら覚えていて、損のないアーティスト名である。

 私がその美術展を知ったのは確か、山の手線の新宿駅に貼られたポスターだったと思う。それを見た瞬間に、私は予定を決めた。ポスターには黒御影石の上にのった豹の頭が鈍い金色の輝きを放っており、豹の斑点はくり貫かれた空洞が表している。私はサンドの彫塑・彫刻のどこが優れているかを、美術評論家のように語ることはできない。ただ一言、「違う」としか言えない。

 ところで執念深いコレクターの私は、大胆にもサンドの作品を求めようとした。しかし…ないのである。ブロンズや色大理石の作品は、まったくと言っていいほどマーケットに出ていないのだ。これは欧米ではとても人気があるアーティストという他に、サンド自身が製薬会社の取締役(のちに社長)という恵まれた境遇のため、「食うに困って作品を手放す」ということが全くなかったためである。もっともそうでもなければ、パリのアトリエで番のチータを飼うなんて真似はできない。作品はほとんどがサンド財団の所有になっている。この5年ほどは、ブロンズの小品がオークションにかかっていたのを2・3度見たくらいである。

 サンドの作品は猫科だけでなく、サルや鳥・ザリガニにフクロウなど、広範囲に渡る。そして作品は色大理石やブロンズの他、セーブルやジノリ、アヴィランドといった窯からセラミックが発売されている。このセラミックそこが唯一サンドの作品で大量生産されたものであり、比較的に手に入りやすい。私も3点ほどのセラミックを所有している。もちろん、本当は猫科のブロンズか色大理石の作品が欲しいのだが…コレクターにとって、「裕福なアーティストは扱いにくい」という悔しまぎれのお話である。


イーグルの水差し。アヴィランド製のオリジナル。
頭〜上クチバシの部分が外れる。

 

■ END OF COLUMN#05 ■